●研究開発課題1 センサ基本素子の高性能化
【概要(Summary)】マルチモーダルセンサは、豊橋技術科学大学が実現したイオンイメージセンサを基本構造としています。これまでの標準的な製造プロセスで作製した構造には、センサの感度や動作の安定性を確保するために、センシング表面に数ミクロンレベルの凹型の窪みが存在していました。日常の尺度で見れば、極めて微小な窪みですが、高精度なセンサを実現するには障害となります。そこで、窪みが生じないエクステンドットゲート構造を採用し、その上で、感度や安定性を損なわない製造プロセスを研究しています。併せて、ミクロンレベルの空間分解能とミリ秒以下の時間分解能を実現するためのセンサ電子回路アーキテクチャを開発します。
【背景(Background)】
マルチモーダルセンシングでは、様々な化学・物理現象を検出する必要があります。本研究開発課題では、その基本となるCMOS技術を用いた電位検出器アレイを開発します。
【研究開発内容(Research & Development)】
【特徴(Feature)】
○ ミクロンレベルの微小画素サイズで微小圧力を検知できる。
○ イオンの挙動と圧力を同時にリアルタイムで2次元画像を取得できる。
●研究開発課題2 マルチガス感応膜の形成とセンシング技術
【概要(Summary)】人間は約400種類の嗅覚受容体を持っています。嗅覚受容体は匂い成分の特徴(分子構造、極性、親水性など)に反応するものであり、人間はその嗅覚受容体の反応パターンを学習・記憶し、匂いを嗅ぎ分けています。この機構をセンサチップで実現するには、匂い分子が吸着することで電気特性が変化する複数種類の匂い検出膜を開発することと、これらの検出膜をセンサ上に固定する技術が必要です。現在、30種類以上の匂い検出膜の実現を目標とし、ミリサイズの領域内に塗り分ける技術を研究しています。さらに、人間の脳が嗅ぎ分けることの代替え手段として、ディープラーニング等のAIデータ処理技術を導入します。
【背景(Background)】
複数のガス検知を半導体センサで実現するために、ガス分子吸着により電気特性が変化する複数の匂い検出膜の開発と、センサ上に固定化する技術が必要となる。
【研究開発内容(Research & Development)】
【特徴(Feature)】
○ 複数の異なる匂い感応膜により種々の匂いを嗅ぎ分ける。
○ 匂いをデジタル化し、匂いのデータベースを構築できる。
●研究開発課題3 水素イオン感応膜上への圧電膜形成とセンシング技術
【概要(Summary)】圧電材料は、圧力や物理的な力を加えることで、内部で分極が生じ、電位を発生します。これを利用して、研究開発課題1で開発しているセンサ上に圧電薄膜を形成することで、圧力や物理的な力を検出することができます。しかし、分極を発生させるためには事前に圧電薄膜に高電圧印加処理を行う必要があり、電位検出器アレイ上に圧電膜を形成した後で処理を行うと、センサは破損すると考えられます。現在は、製造プロセスを工夫し、40マイクロニュートンの微小圧力を検出することに成功しています。
【背景(Background)】
細胞活動等の様々な現象を観察するために、微小な領域で圧力とpHやイオンの挙動を検出することを目指します。
【研究開発内容(Research & Development)】
(準備中)
【特徴(Feature)】
○ 複数の異なる匂い感応膜により種々の匂いを嗅ぎ分ける。
○ 匂いをデジタル化し、匂いのデータベースを構築できる。
●研究開発課題4 マルチモーダルセンシング技術による環境分野への展開
【概要(Summary)】マルチガス成分センシングでは、性質の異なるガス受容体を複数用いることで多数のガスを検出可能と考えられますが、作製可能なガス受容体も無制限ではありません。そこで、センサに多様性の機能を付加し、ビックデータ解析技術を組み合わせることにより、ガスの高精度なマルチモーダルセンシングを実現することを目標としています。
【背景(Background)】
「ソサエティ5.0」や「トリリオンセンサ」に代表される,サイバー空間と実空間を結びつける概念が注目されている。その実現には,超多次元情報を時空間相関性を保って測定する,いわゆるマルチモーダルセンシング技術が重要である。
【研究開発内容(Research & Development)】
旧来のセンサ開発では,夾雑物や外乱のある中でも、いかに高感度かつ高い選択性で検出できるかに焦点をあてて進められてきた。一方でマルチモーダルセンシングでは,センサの選択性は必ずしも重要ではない。検出対象項目に対する反応が異なる複数のセンサを組み合わせる事により,総合的に情報を捉える事ができるためで、実空間の環境計測に適したセンシング概念である。
【特徴(Feature)】
○ 非理想環境(夾雑物,湿度など)でのガス計測が可能
○ 分子ふるい機構と深層学習により多様なガスに対応
●研究開発課題5 マルチモーダルセンシング技術による農業分野への展開
【概要(Summary)】植物や農作物は、周囲環境に応じて種々の香りを発生しています。たとえば、緑の香りとよばれる香り成分の放出がその代表的な例であり、植物が傷ついたり、害虫の攻撃を受けたときに発生すると考えられています。マルチガス成分センシング技術により、植物が発生する香りをモニターすることで、生育異常を検知できると期待されます。併せて、光合成や呼吸、さらには、根の活性(イオンイメージングセンサの応用)をモニタリングし、植物の生育状態を好適に保つ栽培管理を行うことで、農業生産(植物工場〜露地生産)の生産性向上を目指します。
【背景(Background)】
農業生産および農産物の流通から食に至るフードチェーンに適用可能なマルチモーダルセンシングに基づいた植物診断技術を開発し、生鮮野菜等の安定供給に貢献するとともに、健康で豊かな食に貢献します。
【研究開発内容(Research & Development)】
本課題では、農業生産および農産物の流通と食に至るフードチェーンに適用可能なマルチモーダルセンシング技術を用いた植物診断技術の開発を行います。
①香り(匂い)成分計測に基づいた植物診断
②根を対象とした植物診断
【特徴(Feature)】
○ 先端的なセンサを用いて植物の生育・保存状態を正確に把握します。
○ センサを身にまとった植物との対話を通じて健康で豊かな食に貢献します。
●研究開発課題6 マルチモーダルセンシング技術による医療創薬分野への展開
【概要(Summary)】センサ基本素子上に特定のイオンを透過させる物質や特定の蛋白質と反応する酵素を含有する感応膜を設けることで、細胞の活動状態によって濃度が変化するNa、K、CaイオンやATP(アデノ3リン酸)等の神経伝達物質の挙動を観察することができます。本研究開発課題では、細胞の活動状態を観測するシステムを構築することで、疾病治療、医薬品など医療創薬に役立つ研究開発ツールの実現を目指します。
【背景(Background)】
生体物質や細胞周辺のイオンの挙動を観察することで、医薬・創薬分野における研究開発ツールの創出を目指します。
【研究開発内容(Research & Development)】
【特徴(Feature)】
○ K, Na, Caイオン及びATP等の神経伝達物質の同時観察が可能。
○ 未知ウィルスや病原体による生体細胞の挙動をリアルタイムに観察できる。
●研究開発課題7 マルチモーダルセンシング技術による健康見守り
【概要(Summary)】本研究開発課題では、分子インプリンティングを用いたバイオセンサを研究します。分子インプリンティングとは、標的分子を取り込んだ状態で高分子を重合させ、標的分子を一旦除去し、その空隙を分子認識に利用する手法です。本技術を人の体液中の低濃度バイオマーカー検出に利用することで、健康状態に関わる情報を非侵襲に計測でき、人の身体を傷つけないヘルスケア機器が実現可能となります。
●研究開発課題8 マルチモーダルセンシング技術による人間機械調和への展開
【概要(Summary)】本研究開発課題では、現代人の健康への高い意識と要求に応える先進的ロボティクス研究を行います。第一段階として、人の脈拍や鼓動をモニターすることで、その人の心や身体の状態を判断し、適切な作業をロボットに実現させるフィジカルケアロボットを開発します。さらには、マルチモーダルセンシング技術により、人の感情をきめ細かに判断し作業する、人に優しい人間機械調和技術の実現を目指します。
【背景(Background)】
現代人は自らの健康に気を遣い,より良い生活を目指して生活の質を上げることを目標に生きるようになってきた。そして,人の生活の中にロボットがパートナーとして一緒に生活することが自然になってきた。
【研究開発内容(Research & Development)】
人による手作業とそれが対象に及ぼすときの相互的作用の理解と制御を実現し,新たなフィジカルケアロボットの提唱と要素・統合技術研究を行う。特に,現代人の健康への高い意識と要求に応える先進的ロボティクスとして「TEWAZA」と名付けた指圧・マッサージ運動に特化した知能制御機械を開発し,それが心と身体に及ぼす影響を計測・推定する技術を確立する。
【特徴(Feature)】
○ 人をセンシングし,協調するロボティクスの開発
○ 人をセンシングし,心と身体の状態を推定する技術の開発