マルチモーダルセンシング共創コンソーシアム - 産学共創プラットフォーム 共同研究推進プログラムOPERA

領域統括挨拶

豊橋技術科学大学
大学院工学研究科 教授

澤田 和明

 日本再興戦略の「新たな有望成長市場の創出」では、ロボットやセンサが基盤技術として取り上げられています。IoT/AI時代における主役は、私たちの“安全・安心”を見守る「センサ」と言っても過言ではありません。

 環境変化、自然災害、病気などの事象の変化は、様々な因果関係によって引き起こされています。多様な情報を入手するためには、様々なセンサが必要であり、半導体技術を用いて集積化できれば、ありとあらゆる場所に設置可能な万能センサが実現できます。例えば、私たちの体内の細胞活動を解明するためには、単一の現象(細胞イオンチャネルの活動)だけでなく、同時に発現する他の物理・化学現象(細胞から放出されるガス、力学的変化、活動電位など)を、微視的な位置情報と時間情報をリアルタイムに可視化し、相関関係を分析することが有効です。

 センサ技術とビッグデータ解析技術とを協調させることで、様々な事象の因果関係を捕らえることができます。そのために、複数の種類の情報を検出可能なセンサを集積化する「マルチモーダルセンサ技術」を確立いたします。マルチモーダルセンサにより、未だ相関関係が明らかになっていない様々な信号の変化を、高い時空間分解能で可視化することができ、IoT/AI時代を支える“データ”の価値を飛躍的に高めることを目指します。

 本プログラムでは、豊橋技術科学大学が世界で初めて開発した、化学現象を可視化できる「イオンイメージセンサ技術」をベースとして、センサの空間分解能と時間分解能を高めるための基盤技術を確立するとともに、これらの基盤技術を融合した3種類のマルチモーダルセンサ(マルチモーダルガス成分センサ、マルチモーダルフィジカル・ケミカルセンサ、マルチモーダルケミカル・バイオセンサ)を実現する計画です。

 産学共創プラットホームを活用して、参画企業とともにこれらのセンサを実現するための技術開発と社会実装を推進し、超スマート社会を支える半導体産業の活性化と、医療・バイオ・化学分野等の高度情報化に向けた基幹産業を創出してゆく所存です。

沿革

 1997年に世界で初めて実現したCMOS/CCD型イオンイメージセンサは、センサ表面の電荷量の変化を半導体内の電位ポテンシャルの変化に変換することを基本原理としており、累積動作が可能などの特徴を有しています。以来、イオン検出感度の増大やイオンイメージセンサの画素数増大、高密度化、小型化技術を開発して参りました。

 2012年から民間企業や公的研究機関の皆様とマルチモーダルバイオイメージセンサ研究会を組織し、CMOS/CCD型イオンイメージセンサの社会実装に向けた活動を続けています。開発当初の画素数は8画素に過ぎませんでしたが、現在は画素数65,000(256×256)画素のイオンイメージセンサの実用化段階に至っています。
 CMOS/CCD型イオンイメージセンサが高感度な電位検出器アレイとして動作することを利用し、様々な物理・化学現象に反応する感応膜を設けることにより、光、ガス分子、圧力、生体物質などを検出できます。さらに、半導体製造技術を利用することで、複数の感応膜を形成することができ、本プログラムで提案する物理・化学情報をミクロンレベルで可視化するマルチモーダルセンシング技術の創出に至りました。